中年カップルが岐阜の温泉旅館・湯本館を訪れた理由

 勝てる恋愛テク地域別

深緑だったモミジが紅葉し、やがて散ってしまった風景。
どこか寂しさが込み上げてきそうですね。そんな晩秋だからこそ深緑の名残と散り行く紅葉を求め、山間部の旅館などへ足を運ばれる方もいらっしゃるでしょう。

岐阜県美濃市、奥長良川の山間部にある隠れ家的旅館・湯本館
こちらは紅葉のほか、天然岩盤浴「石の湯」を目当てに関西など遠方からも通うファンがいるといいます。同館の自慢は、飛騨牛と郷土懐石料理。地元で栽培された肉厚な椎茸は、炭火で軽く炙って、刺し身でも食べられるという飛騨牛の切り身は、表面をさっと塩で食します。生け簀で泳がせているというイワナ(川魚の1種)は、炭火でじっくり焼き上げるのですが、焼き過ぎると身がパサパサになってしまうため、食べ頃の見極めが大切です。

そうやって、ほどよく火が通した食材は絶品。旨味と脂、水分がほどよく閉じ込められた食材を口に含んだ瞬間、誰もが笑顔をこぼさずにはいられないでしょう。ある30代男性と40代女性の大阪から訪れたというカップルは、お互い自宅に子どもを残して来ているようで、「子どもは可愛いけど、一緒だとこんなゆっくりと食事や会話を楽しめないよね」と写メを撮ったりしながら楽しそうです。

同旅館の夕食は18時と早めで、温泉に入ってしまえば、夜はすることがなくなってしまうのですが、先ほどのカップルは、手を繋いで庭を散策したり、窓から散り行くモミジの葉を眺めたりと言葉少なめにゆったりした時間を過ごしているようでした。大阪に帰れば、お互いに慌ただしい日常が待っている。でも、それまではつかの間ではあるけれども、好きな人と2人切りで静かで落ち着いた時間を過ごしたいということでしょうか。

岐阜の大地によって育まれ、同館によってじっくり調理された食材のように、ゆったりとした時間の中で、2人の関係は最高潮の時を迎え、やがてその時は過ぎ去り、それは余韻へと変わっていくのでしょう。江戸時代の俳諧師、小林一茶は秋に、大気中の水蒸気が冷えて水滴になったのを見て、

露の世は 露の世ながら さりながら
(この世は露のように儚いものと知っているが、諦めきれないのです)

と詠んだそうです。
紅葉や露のように、幸せな時間がやがて過ぎ去ってしまうとわかっているからこそ、かけがえのないものと強く感じることもあるのでしょう。時の流れを受け入れ、身を任せながら、ただ人生や恋愛の儚さを感じるというのも、また風流な秋の過ごし方の1つと言えるのかも知れませんね。
(記事:スタッフ)

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