物質と感情、両面の欲求を満たせていますか?
某福祉サービスで管理者を務める40代女性は言いました。
「仕事は社長の機嫌をとることが半分、あとの半分は社員とアルバイト、利用者と保護者に気分よくしていてもらうこと」。
自己主張が強く何でも思い通りにいかないと気がすまない社長の機嫌を損ねては、“説教”や険悪な雰囲気となり、仕事どころではなくなりますし、かといって、社長の機嫌ばかり伺っていれば、従業員や利用者へのケアが疎かになってしまいます。結果、この40代女性は、自分の意思や意向を押さえて、周囲の人々の感情を優先した結果、ストレスが蓄積して退職してしまいます。
仕事=職務としてやらなければならないこと、という解釈をされるかと思います。
職場だけに限らず、恋人同士や家庭でも、それぞれの役割として、収入の確保、家事、子育て、生活設計、社会的な繋がりの維持などがありすまよね。ここで軽視されがちなのが、身近な人物の感情。サービスや商品の提供者(Business)と一般消費者(Consumer)の関係に限らず、対象者が望む金銭やサービス、商品など物質的な価値を提供することにのみ力点を置いていないか、ということです。
極端な例では、「望むモノを与えてあげているのに、なぜ感謝されないのだろう?もっと感謝されてもいいはずなのに」「いや、もっと感謝されるべきだ!感謝の気持ちが足りない相手が悪い」という発想をお持ちの方がいらっしゃいます。これは、物質的な欲求を満たせば、人は満足してくれるという短絡的な価値観から来ているのでしょう。ですが、恋愛をはじめとする実際の人間関係は、物質的な欲求<感情的な欲求、となるケースがしばしばです。
では、感情的な欲求とは何なのか?
人それぞれとは思いますが、思いやられること、感謝されること、理解されること、(個性や考え、思想を)認められることなど、自分自身の存在を尊重してもらうことではないでしょうか。
整理しますと…。
↓
<物質的な欲求>
金銭やモノなど多くの人が求めている現実的欲求
<感情的な欲求>
精神的な充実、喜び、やりがい、信頼感、生きがい
と言えるのかも知れません。
ポイントは、物質的な欲求が常に一定で不変的になりがちなのに対し、感情的な欲求は不安定かつ状況に応じて変化しやすいということです。そういったそれぞれの性質上、物質的な欲求はマンネリや飽き、慣れが生じやすく、感情的な欲求はその逆とも言えるでしょう。
人と深くかかわっていきますと、最初は物質的な欲求から始まり、少しずつ感情的な欲求を求める比率が大きくなっていくのではないでしょうか。これは、物質的な欲求が満たされやすく、マンネリや飽きの状態になりやすいために、満たされにくく、マンネリや飽きが生じにくい感情的な欲求の優先度が高くなっていくからでしょう。
人が自分の元から離れてしまう根本的な原因を考える時、人の感情的な欲求に焦点を当ててみますと、今まで見えなかったものが見えてくるかも知れませんよ。
(記事:スタッフ)